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コラム

 歩き始めた地域医療連携推進法人

社友 榊 次郎
2020年4月30日

 国は2015年より各都道府県において、地域医療構想の策定を進め、医療提供体制の整備を図ることとされており、その達成のための一つの選択肢として創設した、地域の医療機関相互間の機能の分担・連携を推進し、質の高い医療を効率的に提供するため制度である。 然しながら周知のことではあるが2025年の医療計画も含めて、高齢化に伴う医療費高騰に対する対抗措置としての制度創設であることは明確である。制度の仕組みは周知の通りと考えるので改めて説明はしないが特筆すべき法人の紹介を行う。まず、現在まで承認されている法人は下表の通りとなっている。

法人名 主地域 連携施設数 認定日
尾三会 愛知県 30法人31施設 2017年4月2日
備北メディカルネットワーク 広島県 4法人4施設 2017年4月2日
アンマ 鹿児島県 3法人5施設 2017年4月2日
はりま姫路総合医療センター整備推進機構 兵庫県 2法人2施設 2017年4月3日
日本海ヘルスケアネット 山形県 11法人55施設 2018年4月1日
医療戦略研究所 福島県 4法人6施設 2018年4月1日
房総メディカルアライアンス 千葉県 2法人2施設 2018年12月1日
日光ヘルスケアネット 栃木県 10法人26施設 2019年4月1日
さがみメディカルパートナーズ 神奈川県 5法人17施設 2019年4月1日
滋賀高島 滋賀県 4法人5施設 2019年4月1日
江津メディカルネットワーク 島根県 3法人2施設 2019年6月1日
北河内メディカルネットワーク 大阪府 12法人16施設 2019年6月1日
弘道会ヘルスネットワーク 大阪府 3法人9施設 2019年6月1日
ふくしま浜通り・メディカル・アソシエーション 福島県 2法人6施設 2019年10月1日
桃の花メディカルネットワーク 茨城県 2法人2施設 2019年11月29日

 尾三会が藤田医科大学病院を始め参加施設31で名古屋を中心に広域で構成されているが、首都圏タイプだ。これに対して地域タイプで特色を出している2法人を見たい。一つは山形県の日本海ヘルスケアネットと島根県の江津メディカルネットワークだ。

■日本海ヘルスケアネット
当法人は日本海病院を先頭に構成されるが、法人の活動として2018年から、「安全で、効果が確かめられていて、経済性がある薬剤による標準薬物治療」を地域で推進することを目的に、 地域医師会と薬剤師会が強力にタッグを組み、地域フォーミュラリを策定。 地域で推進してきた。18年11月に抗潰瘍薬・PPI、糖尿病治療薬・αグルコシダーゼ阻害薬を皮切りに、19年2月にARBとスタチンを策定するなど、範囲を拡大してきた。 更にはフォーミュラによる標準化とジェネリックへの切替えによる購買価低減の効果を目指していて成果も徐々に出てきている。

■江津メディカルネットワーク
当法人は地域医療連携推進法人としての機能を活かす取り組みとして、江津メディカルネットワークは「医師のクロスアポイントメントシステム」を導入した。 同システムは、在籍型出向で、出向元と出向先のそれぞれの職員の身分をもってそれぞれの機関のもとで、必要な従事比率で業務を行うもの。出向元と出向先の業務従事割合、給与支給方法等の取り決めを行う。 江津メディカルネットワークにおいては、診療所等の後継者の早期帰郷を測る手段として、江津病院および診療所等の両方の医師として勤務できるシステムを構築する。

 17診療科を開設する済生会側は、医師不足で常勤医が不足する診療科の強化や医師の負担軽減が見込める。開業医側は手術室をはじめ、コンピューター断層撮影装置(CT)などの設備を使って高度な治療が行えるようになり、双方に利点がある。
過疎化する地域医療の継続を第一とした取り組みであり、他の地域でも運用可能な仕組みとして意義はある。

 更にはこういった仕組みで、今回の新型コロナなど感染疾患に対してもより迅速にそして院内感染なども起こさず対応可能な仕組みを構築する子が出来るのではないだろうか。 ただ単に、国民医療費低減のためではなく「地域医療を守る」ことを前提にこういった制度を広めていくことが肝要と考える。
あと、問題・課題はガバナンスにあることだ。自治体病院のあり方にも言及せざるを得なくなるが自治体病院が頭になることにはクエッションだが、営利のみの追求でも問題はある。 幾つかの問題をクリアすることを医療機関だけではなく地域住民も考える必要はあるのではないだろうか。診てもらうだけではない。

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